造血幹細胞移植の一般的な方法と種類
造血幹細胞移植の適応
造血幹細胞移植（以下、移植治療）の適応は、抗がん剤治療を行って根治が望めない、または再発してしまう場合となります。その理由は、移植治 療の目的として、一般的な抗がん剤よりも大量の抗がん剤を使うことをはじめ、さまざまな合併症 をきたすために、非常に多くの合併症、副作用の危険があるためです。 抗がん剤で治る白血病であれば、移植治療は必要ありません。しかし、白血病が治らない状況に あれば、長期的に生きることが難しくなってしまいます。そこで、多くの副作用や合併症を起こす リスクと引き換えに、治癒を目指すための移植治 療を行うことを考えます。
造血幹細胞移植の方法
抗がん剤を使うと、白血病細胞をやっつけることもできますが、同時に自分の白血球もなくなっ てしまいます。通常の抗がん剤治療は、白血病細胞をやっつけながら自分の白血球はなくしてしまわない程度の抗がん剤を調整して使用します。 この方法で治すことができない場合に、移植治 療を行います。移植にはかなり大量の抗がん剤や 放射線を使用することになります。そうすると自分の力では血液をつくることが難しくなってしま うため、「他人の白血球」を後から植え付ける作業 を行います。この作業が「移植治療」ということ になります。ですから、体の弱った方や、高齢で治療に耐えられない方は大量の抗がん剤を投与す ることができず、残念ながら移植治療を受けることができません。
造血幹細胞移植の種類
前述の「他人の白血球」には、さまざまな種類があります。まったくの他人の白血球では、体 中で血液が増えない状況になること（拒絶）や、移植した白血球が体を攻撃する合併症（移植辺対宿主病）が強く出すぎてしまうことで、逆に危険にさらされることがあります。そこで、自 分の白血球に形が似ているものから順番に選ぶことが一般的で、幾つかの種類から選択することになります。（図）
どれだけ似ているかどうかを調べるには、人白血球抗原（human lymphocyte antigen：HLA）という血球型を指標にします。白血球を提供してくれる人のことを「ドナー」と言います。似ている白血球を持ったドナーさんには、
● ＨＬＡ一致血縁同胞 （HLAの型が一致した兄弟姉妹など）
● ＨＬＡ一致非血縁（骨髄バンクドナーなど）があります。
HLAの型の違いが大きければ大きいほど、難しい合併症（移植片対宿主病）が現れますが、逆に 白血病細胞を異物と認識してやっつけてくれる作用（移植片対白血病効果）も強くなります。このバランスを取る方法はいろいろありますが、移植 片対宿主病はひとつ間違えれば死につながるため、一般的にはHLAの型を一致させた移植治療を優先的に行うことで対応しています。近年では、さらに治りにくい白血病に対して、わざとHLAの型が一致しない、
● ＨＬＡ非一致血縁（HLAの型が一致しない兄弟、子供、親）による移植を行っても、比較的安全が担保される ことがわかってきました。HLAの型が一致した 兄弟姉妹がいらっしゃらない時に行われることもあります。 また、へその緒に含まれる白血球も移植治療で使用できることがわかり、
● 臍帯血（臍帯血バンクなど）を使用した移植を行うこともあります。この移植では、細胞の数が非常に少ないことなどの様々な理由から、移植片対宿主病が起こりにくいということが言われており、HLAの型が一致しない移植 を行うことが可能となります。これらの新しい移植は、治療効果よりも合併症が目立つことが多く、通常は難治性の白血病や、２回目以降の複数回での移植治療において行われることが多いです。
移植は、ドナーさんから採取する時の採取場所 によっても種類が異なります。
● 末梢血幹細胞移植特殊な装置によって、腕の血管から造血幹細胞を採取します。装置は成分献血の時に使う機械に似ています。ドナーさんは、数日間の薬物投与を行い、採取当日は3～4時間かけて採取することになります。
● 骨髄移植全身麻酔を行い、腰骨から800～1000cc程度の骨髄液をドナーさんから採取します。一度にたくさんの骨髄量を採取するため、あらかじめドナーさんご自身の血液を輸血用に保存しておく必要があります。
